われらアグリ応援団 第18回「やっぱり人情」

2022.07.22

心配りと肌感覚を

 

 子どもたちがバケツで栽培する稲が、青々と伸びている。そんな写真が、メールで送られてきた。

 ああ、あの時のバケツ稲が、もうこんなに大きくなったのか。「富富富」の苗を泥まみれになって植え付けていた子どもたちの姿が思い出され、ほほ笑ましく感じた。

 送り手は農林中央金庫富山支店の中田圭亮さんである。

 彼は射水市にある片山学園初等科の子どもたちに、体験を通して「農業」と「金融」を学んでもらうプロジェクトに取り組んでいる。JAいみず野や北日本新聞社などと組み、卒業するまで長期にわたって学びにかかわっていこうという事業である。

 これを続けていくのは大変であろう。

 だが、関係者すべてに稲の写真を届けるような、こまやかな心配りができる中田さんであればきっと成し遂げることであろう。記事を書く身としても、こうした思いやりに接すると、微力ではあっても応援したくなる。

 さて、取材をしていて楽しいのは、思いがけない人の、思いがけない一面を垣間見たときである。

 バケツ稲に植え付けた授業では、JAいみず野から若い職員たちも参加し、スタッフ総出で子どもたちに手ほどきした。

 会場には当時専務だった塚本清組合長の姿もあった。最初は隅の方でにこにこと見守るだけだったが、いつの間にかスタッフに交じっていた。若い職員たちに、苗を取り分ける方法を熱心にアドバイスしているのである。

 きっと農業が好きで、情にも厚い人なのであろうと、心温まる思いがした。

 百聞は一見に如かずで、どんなにインタビューを重ねても分からないことが現場に出ると分かる。そして、いかなるプロジェクトなのか肌で確かめようとしていた塚本さんも、そのことをよく知っている。

 それこそが優れたリーダーの資質であると私は思う。

 

▲バケツ稲の苗を取り分ける作業

 

▲子どもに苗を手渡すスタッフ

 

▲子どもたちを手伝うスタッフ

 

▲バケツ稲の授業に参加したスタッフ

 

〇執筆者

本田光信(ほんだ・みつのぶ) 1966年生まれ。平成の幕開けとともに一般紙記者になり、報道・編集の現場で仕事をしてきた。デスクなどを務めて退職し、フリーとして活動。2021年から日本農業新聞富山通信部ライター。著書や共同執筆による出版多数。「文藝春秋」、日本新聞協会「新聞研究」などに執筆歴あり。