われらアグリ応援団 第24回「オレンジの服」

2022.11.21

富山の希望となるか

 

 そのスタッフは全身オレンジ色のおそろいの作業服を着ていた。

 「かっこいいなあ。ガンダムのシャアみたいですね」。そう言うと、オレンジ色の一人がはにかんだような笑みを見せた。

 北陸農政局の水橋農地整備事業所で働くみなさんである。所長の山本昌也さんが「彼らの服、何だと思いますか」と目を輝かせてお尋ねになるので、もう一度、国民的アニメの人気キャラの名を口にすると、「ニンジンですよ」という返事。頭にかぶる白い帽子はウサギなのだという。よく見ると、かわいい耳が付いていた。

 この日は、国が実証実験を進める「地下かんがいシステム」のニンジン畑に、近くの水橋東部小学校の子どもたちを招いて収穫を体験することになっている。スタッフが、いかに張り切っているかが伝わってくる。

 さて、この畑が整備されたのにはわけがある。「水田が農地の95%を占める富山県で、どうすれば野菜をもっと普及させることができるのか」という問いが、出発点にある。

 子どもたちに向けた授業の中で、スタッフは「田んぼは水が好きで、畑は水が苦手。田んぼをしていると、畑をつくることができません」と説明していた。これこそが、富山県で野菜の普及を妨げるネックになっているのだが、「地下かんがいシステム」を使えば、一つの農地が田んぼにも畑にもなる。

 しかも、畑の下から野菜に水をやることができるという優れものである。

 その仕組みについては新聞に書いたので割愛するが、3年生の野澤由凪さんは「畑の中にパイプを入れ、水を上げ下げして野菜に水をあげるのはすごい」と目を輝かせていた。子どもたちはちゃんと理解し、大きく育ったニンジンの収穫を楽しんでいた。

 国はこのエリアで612ヘクタールもの農地再編に着手し、スマート化への対応も進めていく。ニンジンの服を来て子どもたちに向き合うスタッフであればこそ、未来につながる「新たな農業」に可能性を感じる。

 

▲ニンジンを収穫する子どもたち

 

▲地下かんがいシステムの実証圃

 

▲土壌の計測機器に触れる子どもたち

 

▲地下かんがいシステムを説明するスタッフ

 

 

〇執筆者

本田光信(ほんだ・みつのぶ) 1966年生まれ。平成の幕開けとともに一般紙記者になり、報道・編集の現場で仕事をしてきた。デスクなどを務めて退職し、フリーとして活動。2021年から日本農業新聞富山通信部ライター。著書や共同執筆による出版多数。「文藝春秋」、日本新聞協会「新聞研究」などに執筆歴あり。