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われらアグリ応援団 第41回 「花見も国際化」

たま吉くん
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われらアグリ応援団 第41回 「花見も国際化」

心に響くストーリー

 

今年の桜は見事に咲いた。

咲きっぷりも良かったが、驚いたのは花見客が国際色豊かになったことだ。

高岡古城公園を訪ねると、欧米やアジア、その他の国の言葉が飛び交い、ニューヨークやパリにでもいるかのような錯覚にとらわれた。前田利長が築いたこの城跡は、外国の方々にとって日本の歴史に触れる絶好の場所だから、ここに集中しているのかもしれないとその時は思った。

ところが朝日町で取材する機会があり、舟川べりに寄ってみると、「春の四重奏」で知られるこの場所もまた、外国の皆さんでいっぱいだった。富山市の富岩運河環水公園なども同じ状況で、つまり、富山県の桜の名所がにわかに「国際都市化」したのである。コロナ禍で落ち込んだインバウンドが、以前と同じか、それを上回るレベルに戻っているように感じた。

ちなみに海外の人が訪ねてみたいと思うような桜の名所は、自然にそうなったわけではない。舟川べりを例に挙げよう。北アルプスの残雪は大伴家持も絶賛しているくらいだから時空を超えた価値があるとしても、桜並木は近代化の歴史の中で先人たちが築いた遺産だし、チューリップや菜の花については地元の生産者がソメイヨシノの開花に合わせるために並々ならぬ苦労をしている。

もう一つ忘れてはならないのは、ネーミングの力である。

春の四重奏という言葉は、鮮やかな色彩だけでなく、大自然や歴史、人々の努力をもハーモニーのように調和させ、多くの人の心に響く。私の記憶が正しければ、もともとは地元紙の写真部記者がこの景色を撮影し、「春の四重奏」という見出しを付けて新聞に載せたのが始まりであった。感動した心のままに浮かんだ言葉だったのだろうが、いつしかそれが定着し、一つの物語として心に届くネーミングになった。

人は物語を欲する生き物である。舟川べりの成功は観光だけでなく、あらゆることに通じるように思う。農産物のブランド化や6次産業化を進め、海外や全国の人に買っていただくには何が必要か、考えるきっかけになりそうだ。

さて、桜の季節にもう1カ所訪ねた場所がある。富山中央植物園である。色も形も異なる140品種もの桜が植えられていて、ソメイヨシノしか知らない私には新鮮だった。

人も桜も多種多様である。狭い世界観を少しだけ広げてくれた桜の季節に感謝したい。

 

日本農業新聞富山通信部ライター 本田光信

 

▲多くの人を魅了した「春の四重奏」(JAみな穂・桑守佑太さん撮影)

 

▲多彩な品種の桜が咲き誇る富山中央植物園

 

▲ソメイヨシノではない桜も味わい深い