われらアグリ応援団 第57回 「若者の奮闘」 がんばる姿に声援

われらアグリ応援団 第57回 「若者の奮闘」 がんばる姿に声援
○この夏の高校野球で、魚津市の通信制高校「未来富山」が活躍し、富山県代表になったのは記憶に新しい。甲子園では球児たちの熱闘もさることながら、アルプススタンドの応援がさわやかだった。全校生徒はわずか20数人。ほとんどが野球部員で県外出身ということもあり、魚津市内の高校や社会人の吹奏楽団が合同で演奏し、バスに乗って駆け付けた大勢の市民が精いっぱいの声援を送った。
○親元を離れ、魚津に来て頑張ってきた選手たちを心から応援したい。そんな思いで、甲子園に向かった人が多かったのではないか。テレビの取材に応え、「若い人が魚津に来てくれるだけで、ありがたい」と話していた人がいた。
○私もそう思う。
○農業の世界でも、県外から富山に来て奮闘する若者の活躍が目立つようになってきた。
○その一人が茨城県出身の中谷幸葉さん(32)だ。彼は勤めていたメガバンクを辞め、富山に来た。射水市の古民家と耕作放棄地を再生し、そこを拠点にして社会貢献活動に取り組んできた。わずか数年の間に面白い試みを次々に考えてはトライしてきた。
○高さ25メートルもある庭の大木をクリスマスツリーにするイベントや、農作業とスポーツを組み合わせたアグリスポーツの普及活動、廃棄野菜でウニを育てる取り組み、規格外の豆苗を愛犬の餌に活用する試み、35歳以下の若手農業者グループの結成など、挙げだすときりがない。
○すべてがゼロからのスタートだ。彼がやろうとしていることに多くの若者が共感し、協力を惜しまない。やっていることが社会貢献につながり、何より面白いと思えるからだろう。
○彼は昨年、後継者のいなかった市内のスプラウト農場を事業承継し、仲間たちの手を借りながら経営改善や販路開拓に奮闘している。以前はスーパーで見かけなかった富山県産のスプラウトをあちこちで目にするたびに「頑張っているな」と思う。
○最近、スプラウト農場にアルバイトに来た大学院生、平野碧生さん(24)が、栽培環境のデータを集めるDX化に取り組み始めた。「蓄積したデータの分析から、今どんな作業をすることが最適なのかをリアルタイムで判断できるシステムにしたい」と、生き生きした表情で語っていたのが印象的だった。
○中谷さんの周辺だけでなく、県外から来て頑張る若者は何人もいる。そして、富山で生まれ育った人たちも巻き込んで活動の場を広げている。人口減少が進む中でも、こうした若い人たちの姿に、かすかな希望の光が見えてくる。
日本農業新聞富山通信部ライター 本田光信
▲スプラウント農場を承継した中谷さん(左)ら
▲視察団に農場の設備を紹介する中谷さん
▲中高生にDX化を説明する平野さん