われらアグリ応援団 第70回 「ADST」 大規模災害に向き合う

われらアグリ応援団 第70回 「ADST」 大規模災害に向き合う
○豪雨災害に遭った氷見市の現場で、これまでになかった試みが始まった。
○農業農村連携応援体制(ADST=エーデスト)。分かりやすく説明するなら、大規模災害に見舞われたとき、富山県と市町村、土地改良区などが互いに助け合う取り組みである。被害の大きい自治体に、他の自治体が力を合わせて農業土木の応援職員を派遣する。
○私はADSTの活動を取材するため、氷見市七分一地区の被災現場を訪ねた。
○そこは山肌から田んぼに大量の土砂が流れ込み、あぜも大きく崩壊していた。自然災害の大きさをまざまざと見せつけられる現場だが、こうした農地は市内のあちこちにあるのだという。もう一度、米や野菜を作れるようにするには、まず、やらなければならないことがある。被害調査だ。そこからすべてが始まる。
○ADSTは「激甚化する災害」に対応するため、ことしの8月に運用が始まったばかりだった。その最初の活動が、氷見市への支援となった。初日は、県や11市町などの応援職員60人が19班に分かれ、農地や施設の被災状況を調べるために市内各地に派遣された。
○私が訪ねた七分一の現場では、強い日差しの下、応援職員3人が調査にあたっていた。
○崩れたあぜの長さや高さなどを2人が測量し、もう1人がタブレット端末を使って撮影。県が独自に開発した「被災状況共有システム」に記録していった。
○このシステムは、能登半島地震の後、被災調査に手間取った反省から生まれたものだ。その場で簡単な入力作業を行うだけで、現場の写真とGPSによる位置情報、被災状況などがタイムリーに対策本部に届き、情報を自動集計する仕組みになっている。
○ADSTの創設に力を注いだ富山県の國分義幸農村整備課長によると、GPSを使ったこの新たなシステムは、紙の地図と照合する必要がなく、知らない土地に入って調査にあたる応援職員の業務をサポートする役割もあるという。國分課長は「災害がどの程度の規模なのか、調査に全力を尽くしたい」と話していた。
○自然災害は、人々が営々と築き上げてきたものを一瞬にして奪い去る。立ちすくむしかないように見える大災害でも、被災現場には、どうにかして復旧、復興に向けて手を打とうと知恵を絞り、黙々と仕事を続ける人たちがいる。そのような人々の姿や取り組み、思いを伝えていくこともまた、報道の大切な役割なのだと感じている。
日本農業新聞富山通信部ライター 本田光信

▲崩れた田んぼを測量する職員

▲田に土砂が流れ込んだ様子を撮影する職員

▲調査を見守る國分課長